ACP

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自分は救急外来や集中治療室で働くことが多く、時間的制約がある中で重症患者の方針決定をしなければいけない場面が多いです。
そのときに大事になってくるのがACP (: Advanced Care Planning)。
コミュニケーションスキルが必要ですがフレームワークをおさえておくことでよりスムーズにできるようになります。ACPとは、という根本的な部分はまた記載するとして、まずは大事なフレームワークをまとめておきます。

SPIKES

悪い知らせを話すときの方法。

Setting:準備をする
→説明に必要な医学情報を用意する。
→プライバシーが保たれる場所を用意する。
→話し合いに参加する人を準備する(家族側も医療者側も)。

Perception:患者の病状への理解を知る
「あなたの病状について、どのようにご存知ですか?」
→患者が病気についてどのような理解をしていて、どんな気持ちでいるか、を把握する

Invitation:患者の許可
「これから病状について説明してもよろしいですか?」

Knowledge:医学情報の共有
→なるべくシンプルにわかりやすく伝える
→伝えにくい内容であっても回りくどい言い方をしてはいけない
→伝えにくい内容の場合は冒頭でwarning shotを打って心の準備をしてもらう (例:「残念ながら、これからのお話はあまりいい内容ではないかもしれません」)

Emotion:感情への対応
→患者や家族からは様々な感情が返ってくるはずなので、それに対応する
→その際に有用なのが、「NURSE」というフレームワーク

Summarize:まとめと今後の方針説明
→これまでの話をまとめて、今後の方針について説明する
→今後の方針決定に有用なのが、「REMAP」というフレームワーク

NURSE

患者や家族の感情に対する方法

Naming:感情を言葉で表す
「こんなことをいきなり言われて、驚きますよね。」「急にこんな話をされて、混乱しますよね。」

Understanding:理解を示す
「このような状況になって、大変つらいお気持ちであることと思います。」「どうしていいかわからなくなってしまうのも、無理はないと思います。」

Respecting:敬意を示す
「これまで治療を頑張ってこらたのですね。」「しっかりと病気に向き合っていたのですね。」

Supporting:支持する
「私達も全力でサポートしたいと考えています。」

Exploring:さらに深掘りする
「どうしてそのようなお気持ちになっているのだとお考えですか?」「何を一番に心配なさっていますか?」

REMAP

方針決定についてのフレームワーク

Reframe:状況の変化を伝える
→SPIKESやNURSEを利用して、病状を説明する

Emotion:感情に対応する
→NURSEを使用して、感情に対応する

Map:重要な価値観を聞く
「今後の治療で一番大切にされたいことはなんですか?」
→治療において患者や家族の大事な価値観を知る
→家族に話を聞く場合は、「患者ならどう考えるか」に重点を置く

Align:価値観に基づいて方向性を確認する
「お孫さんが結婚されるまではなんとか生きたいということですね」
→患者の価値観を聞いて、今後のプランにおいて重要と思われる事項をまとめ確認しておく

Plan:価値観に合った治療計画を提示する
→主に3つの選択肢の中から提示する
A) 根本的治療をする
B) 根本的治療を試してみるが効果がなければ緩和治療にする(→Time Limited Trial)
C) 症状緩和をメインにする
→患者や家族に治療選択肢を選ばせない。「それでしたらこういう方針がいいと思います」と提示してあげることが大事。

3 stages protocol

(Mayo Clin Pract. 2020; 95: 1589-93.)

上記のSPIKES, NURSE, REMAP, を駆使して、実際にどのように重症患者のACPをとるかというフレームワークの1つ。

Stage 1:病状説明

・医療チームで伝えるべき情報を整理する
・適切な場所や人員を準備しておきます (→SPIKESのS)。

・病状説明は50%ルールと2分ルールに基づいて行う
→50%ルール:全会話の中で医療者側の発言率が50%を超えない
→2分ルール:概要は2分以内に話す

・予後について説明する
→数日、数週、数ヶ月、など大まかな範囲で話す
→予想される機能予後について話す

・患者や家族の感情に対応する (→NURSEなどを利用)

Stage 2:Goal of careの明確化

何を目標として治療するかを患者の価値観に基づいて明確化します。
「どのような人ですか?」「今後の人生にどんなことを期待しますか?」という一般的な質問から入り、「生きがいはなんですか?」「どんな状態だったら許容できないと思いますか?」というより詳細な内容に踏み込んでいきます。

最終的には「今までの話をまとめると、XXさんにとって一番大事なのは●●のようですね。いかがでしょうか?」と内容を総括し、確認します。

Stage 3:治療オプションの相談

いくつかのポイントを抑えて話します。

①具体的な方針をこちらから提示する

「いろいろ伺うと、現行の治療は全力で続けて、もしこれ以上の治療が必要になった場合は症状を和らげる治療にシフトしていく、というのがよさそうですが、いかがでしょうか?」というように患者のGoal of Careに即した治療法をこちらから提示します。このときにREMAPが有用です。

②Yes/Noの選択を迫らない
「心肺蘇生はどうしますか?」「透析はどうしましょう?」など言われても患者にとっては負担になるだけです。

③フィードバックを求める
「このような方針で、どうでしょうか?」などと聞いて、患者側の意向を再確認します。ここで齟齬がでる場合は、Stage1,2でのやりとりが不十分である可能性があり、再度戻ってより踏み込んで質問します。

Jonsenの4分割表

方針決定が難しい患者において、多職種カンファレンスなどで、今ある問題をもれなく洗い出す方法。
医学的適応、患者の意向、QOL、周囲の状況、に分けて整理します。

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