気になるところをまとめてみました。随時追記します。
症状での分類
めまいは「dizziness」といい、以下の4つに分類されます。
①vertigo:いわゆる回転性めまい
②presyncope:前失神
③lightheadeness:ふわふわするような感じ
④disequilibrium:平衡障害
これらの症状による分類は現在では有用でないとされております。中枢性や末梢性のめまいを区別することができないためです。そのためいわゆるめまいに該当する症状はdizziness / vertigoとまとめられるのが一般的です。
ATTEST approach
救急外来での対応方法として、「ATTEST approach」が有効です。(J Emerg Med. 2018; 54: 469-83.)
これは
A: Associated symptom (随伴症状)
TT: Timing and Trigger (発症時間とトリガー)
ES: Examination signs (身体所見)
T: Test as needed (追加検査)
のアプローチでめまいに対応するというコンセプトのものです。
眼振、測定障害、体幹失調がある症例を対象にしており、
①AVS: acute vestibular syndrome
②s-EVS: spontaneous episodic vestibular syndrome
③t-EVS: triggered episodic vestibular syndrome
に分類されます。
安静時すでに誘発されるまでもなく眼振などの症状がある場合は、AVSになります。
安静時に症状はなく、頭位変換などで誘発される場合はt-EVS、誘発されず自然に発生するものはs-EVSになります。
それぞれ想起する疾患は、
AVS:前庭神経炎、後方循環系脳梗塞
s-EVS:前庭性片頭痛、メニエール病、後方循環系TIA
t-EVS:BPPV、CPPV、起立性低血圧
になります。
AVS
元論文では数日から数週間続く持続性のめまいと定義されています。
イメージとしては診察時にすでに安静時眼振などの症状がでているもの。語弊を恐れずにいえば「なんとなくやばそうなもの」です。
末梢性めまいとして前庭神経炎が、中枢性めまいとして後方循環系脳梗塞が該当します。それぞれを区別するための身体症状を以下の順番で検索し、1つでもあれば中枢性疑い、いずれも問題なければ末梢性疑い、となります。
s-EVS
誘発なしで発生する発作性のめまいで、持続時間は数分から数時間です。
末梢性として前庭性片頭痛やメニエール病が、中枢性としてTIAが該当します。メニエール病の頻度は多くありません。他の原因としては迷走神経反射、パニック発作、などが該当します。まれではありますが、心血管系(不整脈、狭心症、肺塞栓)、内分泌系(低血糖など)、中毒(CO中毒など)、も該当します。
この場合は病歴が命です。身体症状も重要ですが明確にTIAを区別できるものはありません。TIAを疑うことが重要です。
t-EVS
誘発により発生する発作性めまいで、持続時間は通常1分未満です。
末梢性としてはBPPV、中枢性としてはCPPV、その他起立性低血圧、などがこのグループに該当します。CPPVとは後頭蓋窩の腫瘍・脳卒中・脱髄によりBPPV likeなめまいが起こるものを指します。
BPPVを疑ったらDix-Hallpike test、Spine and roll test、を行います。(後述)
BPPVでは見られない所見(→頭痛、複視、脳神経障害、非典型的な眼振、など)がある場合はCPPVを疑います。
TiTrATE approach
ATTEST approachと似たような枠組みのアプローチ方法。(Neurol Clin. 2015; 33: 577-99.)
Triage, Timing, Triggers, Targeted exam, Test, の順番でアプローチを行い、spontaneous AVS, post-exposure AVS, t-EVS, s-EVS, に分類するものです。
post-exposure AVSは外傷や中毒など原因が明確なものを指します。spontaneous AVSはそれ以外のAVSを指します。
大まかな枠組みはATTEST approachと類似しますのでここでは説明を割愛します。興味がある方はぜひ元論文を読んでみてください。(Neurol Clin. 2015; 33: 577-99.)
STANDING approach
救急外来でのめまいについての別のアプローチ方法。(Acta Otorhinolaryngol Ital. 2014; 34: 419-26.)
急性の回転性めまいを主訴に救急外来を受診し、めまい以外神経学的所見のない症例が対象。
※Pagnini-McClure : Spine and roll test
※APV : acute peripheral vertigo (急性末梢性めまい)
(Front Neurol. 2017; 8: 590.)
誘発なしでおこるめまいのうち、注視方向性眼振や垂直性眼振の場合は中枢性疑い。水平固定性眼振のうち、Head impulse test (後述)が正常・中枢性タイプである場合は中枢性疑い。一旦末梢性めまいやBPPVと判断しても立てないor歩行できない場合は中枢性疑い。
中枢性に対して、感度95%、特異度87%、と報告されています。
HINTS
最近ではどこの本にも乗っているアプローチ方法。(Stroke. 2009; 40: 3504-10.)
①Head Impulse test :HIT末梢性パターン
②Nystagmus:方向固定性眼振
③Test of Skew deviation:斜変位試験陰性
この3つが揃えば感度100%(varidationでも95.6%)で中枢性を除外できるというものです。
注意が必要なのは、これは「AVSの中で末梢性なのか中枢性なのか」を見分けるテストであることです。つまり、BPPVなどを含めたAVSを呈さないめまいはこのテストで評価できないことが重要です。
これの難点は手技が難しいこと。そもそもAVSを対象としているのでongoingでめまいが続いている人に対して行うものであり、症状が強く十分な所見が取れないこともしばしば。元論文でも神経眼診察医(neuro-ophthalmologist)が診察したとされており、非専門医には評価が難しいかもしれません。個人的には実臨床においてそこまで有用なものではないと感じております。
Head impulse test
こちらのYoutube動画がとてもわかりやすいです。
前庭動眼反射をみる試験です。
前庭動眼反射は半規管→前庭神経核→外転神経核→MLF→動眼神経核→動眼神経、という反射経路をたどりますが、前庭神経炎など末梢で異常がある場合などで陽性になります。
具体的には検者の鼻を凝視するよう指示して被験者の顔を回転させたときに、被験者の眼が顔の回転よりも「一瞬遅れる」ことをもって陽性と取ります。
所見がでるのは一瞬なので、見逃すこともしばしば。慣れが必要です。